伝統的な建具と一口に言っても、その種類は多様です。箱根関所では、大番所・上番休息所の板戸や障子戸、馬屋の大戸、京口御門の大扉などがあがります。
箱根関所には『相州箱根御関所御修復出来形帳』といわれる非常に詳細な記録が残っており、これに基づいて箱根関所の建具の寸法や使用材料が昔のままでバッチリ復元されています。箱根関所で復元されたこれらの伝統的な建具の仕組みについてお話しします。
箱根関所の象徴的な建具といえば、まず京口御門、江戸口御門の大きな扉が思い浮かびます。通行する旅人を威圧するかのような大きな扉はたいへん頑丈に作られているのが特徴で、現代住宅の柱に匹敵する太さの縦格子(中子=なかこ)が10本も組み込まれた念の入りようは、江戸城の清水門(国指定重要文化財)とよく似た構造です。
また、箱根関所の多くの建具が杉や松などの木材を使用しているのに対して、御門の扉は大半が栂(つが)材を使用しています。栂材は大番所では鴨居や長押(なげし)、床框(とこかまち)など目につく部分の化粧材に使用されていますから、やはり御門の扉で栂が使用されているのは特別な意味が込められているのかもしれません。
大きな門の扉ですから、取り付け作業もさぞおおらかと思われますが、取付作業は大きさに似合わずシビアです。クレーンで吊り上げた扉を柱に吊り込むのですが、ミリ単位で定められた取付位置に向けて大勢の人々が建具を抱えている施工の現場は、現代でありながら遠い江戸時代の施工の様子をほうふつとさせるものでした。
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