原寸図とは、建物の原寸大の大きさの図面を、墨で板に描いたもののことを呼びます。
これは、本物そのままの大きさに図面を描くことによって、納まりの微調整を確認したり、多くの大工が共通の認識を得て工事を円滑に進めることを目的としています。
具体的には、屋根の軒反り(のきぞり)といって、日本建築独特の屋根の優美な曲線を細かく確認することも、原寸図作成上の大きな意義といっていいでしょう。
ところで、建築とはさまざまな職能の集まりによって進行します。木工事は大工さん、屋根工事は屋根職人、石工事は石工さんといったように、実に多くの、さまざまな分野に特化した専門職が入り乱れて工事は進められます。
このような多くの職能を束ねるのが大工棟梁の役目となります。大工棟梁は大工をまとめ上げるだけでなく、現場に入るすべての工事を総括しなければならいのです。
原寸図一般に木工部分に含まれる仕事ですから、大工が製作するのが普通です。しかし、屋根の曲線を美しく作り上げるには、大工の知識だけではなく屋根職人の範ちゅうに含まれる技術にまで十分理解が及んでいないと、確かな原寸図を製作することは到底不可能です。
厩の復元工事では、特に屋根の曲線を美しく作り上げるために、大工さんが屋根の原寸図を描きました。それも、復元根拠となる古文書の記述に一致するよう、屋根板の一枚一枚まで描いた屋根の原寸図を描きました。そして、実際の工事では、その原寸図に描いた屋根の形状に合うよう、大工さんが屋根の下地を作り、原寸図どおりに屋根職人が屋根板を葺き上げたのです。
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