箱根関所には「相州箱根御関所御修復出来形帳」といわれる非常に詳細な記録が残っており、これによってまさに完全に近い関所の復元が可能となりました。
たとえば、材料の寸法については「六尺三寸弐分」などと細かく「分」の単位(1分=3mm)まで記されていますし、敷居や鴨居は溝の数までも記されています。木材だけでなく金物の寸法や使用される釘の本数にとどまらず、石垣の高さや長さ・位置など土木的な範囲に至るまで、広範囲にかつ、こと細かに記されています。分かりやすく言えば、出来上がった建物の部材を一つ一つ分解して、寸法や材種・取り付け位置を詳しく記した調書とでも言えるでしょう。
出来形帳は完成調書として江戸時代の昔に作成された優秀な調書ですが、21世紀の現在では、「出来形帳」は箱根関所復元のための重要な設計書であると言えるかもしれません。だからこそ、箱根関所の復元工事に「出来形帳」は必要不可欠なものです。
この優秀な史料と発掘調査によって発見された礎石などの遺構をあわせて、当時の姿に非常に近い状態で復元が可能となったのです。
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