箱根関所完全復元への道のり / 箱根関跡保存整備事業 / 伝統技術も復元する
大工棟梁
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 箱根関所の復元工事の現場には、熟練した大工に混ざって数名の若手大工が皆自ら希望し、この現場に来ました。彼らは高い技能を持ちながら向上心旺盛で、箱根関所の復元に心血注いでいただきました。
 実際にはこの現場に棟梁の佐藤さんがいることが大きな理由の一つでもあるようです。
 復元工事の山場となる軸部の組上げでは、現場は最も張り詰めた雰囲気となるのですが、棟梁の佐藤さんは一切を大工に任せてほとんど口を挟みません。時折、ポツリと「よく見なさい」と言うくらい。
 一般的に想像される棟梁としての、気高く堅い雰囲気からはおよそかけ離れた人物がこの箱根関所復元工事の大工棟梁・佐藤さんです。
 佐藤さんは大分県出身、昭和14年生まれです。復元工事のため単身箱根までやってきました。大工としての経験は半世紀を超えますが、文化財に携わる仕事を始めたのは意外にも40歳を過ぎてからです。
 しかしながら、その卓抜した技術が多くの文化財保存修理や復元工事現場で認められ、現在では国宝・重要文化財建造物の保存修理や復元工事において、棟梁を務めることができる数少ない技能者の一人として文化庁から認定されています。
 そんな佐藤さんの口癖は「大工は難しい。死ぬまで勉強です。」でした。
 箱根関所の復元工事は『相州箱根御関所御修復出来形帳』(そうしゅうはこねおせきしょごしゅうふくできがたちょう)という稀に見る優秀な根拠史料に基づいた復元で、文化財の修理とはまた一味違った厳密さが求められる仕事です。
 さぞ大変でしょう、と声をかけると、「箱根関所は江戸末期に香川高之という棟梁が修理したと聞いています。あの世の香川さんが、ムムッと唸るような仕事をしたいですね。」ニコリとしながら、古文書に再び目を向けていました。