箱根関所完全復元への道のり / 箱根関跡保存整備事業 / 伝統技術も復元する
曲尺(かねじゃく)
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 曲尺とはL字形の物差しのことです。指矩(さしがね)と呼ぶこともあります。学校の工作の授業などで使ったことのある方も多いかもしれませんし、ホームセンターなどでも必ず販売されていますから、ご覧になった方も多いと思います。曲尺は木工作業では必需品であるともいえます。さて、実際の木工作業では、この曲尺を使用して木材に墨付けを施したり、原寸図を描いたりします。時には木材同士が斜めに組み合わさるように墨付けを行うことがあります。少し考えただけでは頭が痛くなるような、複数の部材が斜めに組み合う複雑な木組みでも、曲尺を使用すれば、自由自在に木材への墨付けが可能となります。
 複雑な作業を可能にする曲尺ですから、その仕組みは非常に複雑怪奇かとおもわれるかもしれません。しかし、曲尺は至って単純な物差しです。
 その仕組みですが、外観はL字に曲がった物差しで、建物の工作に欠かすことのできない直角の線を引くことができます。表側には目盛りが記してありますから、長さを測ることもできます。裏側には、表側に記された目盛りの√2倍(×1.414)の長さで目盛りが付けられています。これを裏目(うらめ)と呼びます。
 では、なぜ複雑な木工作業が可能となるのでしょうか。その秘密は裏側の目盛りである裏目にあります。この裏目には、様々な直角三角形の性質を利用した、非常に難解な高等数学にも匹敵する理論が隠されているからなのです。
外見は非常に単純な曲尺ですが、その機能を使いこなすには想像を超える熟練が必要となります。単純な外見とは裏腹に、曲尺はとても奥が深い道具なのです。だからこそ、曲尺の使用に長けた大工は、昔から大いに尊敬されてきたのです。
 パソコンのような立体解析計算装置が登場する遥か昔から、曲尺によって立体を表現し、加工する技術が存在していました。箱根関所では、屋根の曲線や、伝統的な継手・仕口に曲尺を用いる技術がふんだんに使用されています。
 壮大な復元建物の数々を目の当たりにして、これらがささやかな曲尺1本でつくられたと考えると、大工技術の奥深さを感じます。